新人声優の落書き

声優の玉子である私の落書き集。基本声優以外のことばかり書きます。

創作

桃の白濁【前編】

いつか分からない時間に目を覚ます。 橙色の暖かい光が窓から入り込んでいるから恐らく夕方なのだろう。 この部屋には時計がない。そんなもの必要ない。ここでは時間という概念がない。 今日が何日なのか、ここに来てからどれくらい経つのかも忘れてしまった…

檸檬畑でつかまえて

容赦なく燃える太陽の日差しを浴びながら、それでも彼を目指して急いで歩く。 檸檬なんてそのままで食べられない果物、大嫌いだった。 存在意義が全然分からなくて、まるで自分みたいだと思った。 でも今は違う。 彼と出会ってから、すべてのことに意味があ…

誰とでも寝る女:中

私の気分は地の底まで落ちた。 まるで私の足元だけ地獄の底に続く落とし穴が空いたようで、重たい気分が何をやっても体を重くして、それ以降どうやってその場をやり過ごしたのか覚えていない。 もう彼女の顔も見れなかった。何も見れなかった。 いつも一緒に…

誰とでも寝る女:前編

彼女は誰とでも寝る女だった。 今日愛し合った男とは明日には他人の関係になっていて、毎日違う男を連れていた。 本当に毎日違うのだからビックリする。 また、彼らは全員が全員まったくタイプが違った。 優等生もいればヤンキーもいて、見た目も整っている…

『同級生の訃報』 1:突然の訃報 

「波流夏ー!電話よ、降りてきてー!」 行動経済学の教科書を開き、まさに今から勉強しようかというところでリビングにいる母から呼ばれた。 家の固定電話に私宛に電話、なんて。おかしい。友達やバイト先にはLINEしか教えてないし、固定電話に私宛ってこと…

海辺のレストラン:前編

暖かな風が肌を撫でる。 うみねこが鳴きながら空を飛んでいる。 少し歩くと、静かな波の音がする穏やかな海が見えてきた。 エメラルドブルーの色が透き通っていて、年甲斐もなく駆け出したくなる。心が躍る。 白い砂浜に足をとられながらも、弾んだ心で自然…

無題(仮):前編

彼氏いんのかよ・・・ 心の中でそう悪態をつく。目の前の彼女は、実に軽やかに、事もなげに彼氏との週末デートルーティンをベラベラと話してくる。 もうやめたい。ちょっと好みの女性を見ると勝手に気分が浮足立って、彼氏がいると知った途端に勝手にガッカ…

冬の朝

足の冷たさと寒さで目が覚める。 朝の静謐な空気を鼻腔いっぱいに吸い込む。 冷たさと共に心地よさが胸に広がってきた。 卸したての真っ白なシーツを広げるときのような、清潔な気配。 雪に侵されたこの街に生まれて14年。 もうずっと、冬の朝はこうやって過…