海辺のレストラン:前編
暖かな風が肌を撫でる。
うみねこが鳴きながら空を飛んでいる。
少し歩くと、静かな波の音がする穏やかな海が見えてきた。
エメラルドブルーの色が透き通っていて、年甲斐もなく駆け出したくなる。心が躍る。
白い砂浜に足をとられながらも、弾んだ心で自然と歩みも早くなる。
ウェッジソールのサンダルを脱ぎ捨て、足を海に入れてみる。
冷たくて気持ちよくて、キラキラと太陽を反射する水面に見とれてしまう。
風に飛ばされそうになる帽子を手で押さえながら、子供みたいに海と遊んだ。
一通り満足した後、今日の目的のレストランに向かった。
水平線と並行に砂浜を10分ほど歩くと、見えてきた。
浜辺にポツンと置かれた、使われなくなった電車。
ここがそのレストラン。
車両内に入ると、店主である女性が出迎えてくれた。
1人であることを伝えると、「お好きな席にどうぞ」と言われる。
車両内には、ボックス席の椅子と椅子の間にテーブルが置かれた席が10席程度あった。
私は何となく、列車の中央らへんの席に座った。
平日の14時という時間帯のせいか、客は私しかいなかった。