新人声優の落書き

声優の玉子である私の落書き集。基本声優以外のことばかり書きます。

『同級生の訃報』 1:突然の訃報 

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「波流夏ー!電話よ、降りてきてー!」
行動経済学の教科書を開き、まさに今から勉強しようかというところでリビングにいる母から呼ばれた。
家の固定電話に私宛に電話、なんて。おかしい。友達やバイト先にはLINEしか教えてないし、固定電話に私宛ってことは学校かなんかしらの公的機関か・・・まさか警察?
嫌な予感に苛まれながら、リビングに向かう。


リビングに入ると母が不安げに「週間Aの記者さんだって。何もしてないわよね?」と言ってきた。
週刊誌の記者!?想像してなかった。まったく覚えがない。
より強い不安を感じながら、「何もしてない」と答え受話器を取る。
「もしもし」
「あ、小野波流夏さんですか?」
「はい、そうです」
「突然連絡してすみません。私週刊Aの山本といいます。
実は昨夜、立花愛理さんが亡くなったんですけど、立花さんとは同級生でしたよね?」
「え・・・」


立花愛理・・・名前を言われて今思い出した。むしろ今まで忘れていた。
記憶を遡って、何とか顔を思い出す。確かに、高校の同級生だった。
彼女とは別のクラスだったけれど、場違いながら別のクラスの人間にまでわざわざ電話してくる記者に感心した。


「立花さんについて知っていることを教えていただきたいんですけど、彼女はどんな人でした?」
「すみません・・・私は立花さんとは違うクラスだったんで、何も知らないです。
試験勉強があるので、すみませんが失礼します」
そう言って、一方的に電話を切った。
実際私は彼女について話せることなんて何もなかったし、当時私と彼女の交流と言えば、
教科書を忘れた彼女に教科書貸してと頼まれたことが2回あったくらいだった。
なんかもっと、彼女について知ってたことがあったはずなんだけど・・・思い出せない。


キッチンに居る母に「なんか高校の時の同級生が亡くなって、それについての取材だったらしい。
その人と何にも交流なかったからすぐ電話終わったよ」と告げ部屋に戻る。
勉強に戻ろうと思ったけど頭の中で彼女のことがグルグル回る。
もうダメだ、とりあえず勉強は中断しよう。
まずは卒業アルバムを引っ張り出してみる。3年ぶりに開いたアルバムは少し埃がかっている。
中を開くと懐かしい写真がたくさん出てきて、思わず感慨にふけりそうになる。
そんなことしてる場合じゃないと、ページをめくる。

・・・いた。立花愛理。
クッキリとした二重に黒目がちな目が印象的な整った顔。
華やかながら少し幼い印象で、アイドルにいてもおかしくないビジュアル。
彼女の写真を見た途端に、当時の情景が、空気が、香りが急激に蘇った。
走馬灯みたいに映像としてハッキリと脳裏に浮かんだ。