新人声優の落書き

声優の玉子である私の落書き集。基本声優以外のことばかり書きます。

檸檬畑でつかまえて

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容赦なく燃える太陽の日差しを浴びながら、それでも彼を目指して急いで歩く。
檸檬なんてそのままで食べられない果物、大嫌いだった。
存在意義が全然分からなくて、まるで自分みたいだと思った。
でも今は違う。
彼と出会ってから、すべてのことに意味がある。
目の前に広がる何百本もの木に何百個と生ってる檸檬だって、この道を抜ければ彼に会えるという道しるべなのだから意味がある。
この檸檬畑を抜けたら彼に会える!
逸る気持ちに鼓動が高鳴る。会ったらどんな風に笑ってくれるだろう。どんな風に優しく労ってくれるだろう。どんな風にキスしてくれるだろう。
太陽の日差しなんて全然気にならない。
今は僕の気持ちのほうがずっとずっと強いから。


もうすぐで彼のところに着く、水やりをする彼の後姿が見えてきた・・・!
気持ちに急かされて走り出す。苦しくて声が出せない。
彼も僕に気づいて手を振ってくれる。
夢中で走って、はぁはぁと息を切らせながら僕は彼に抱き着いた。
「はは、良く来たね。こんなに暑いんだから僕が帰ってくるまで家にいても良かったのに」
走ったからなのか、気持ちが高ぶってるからなのか、いつまでも息が整わなくて返事ができない。
彼に抱き着いたまま何も考えられない。
「ルカ、さすがに暑いよ。こういうことは仕事が終わって涼しいところでしよう?」
そう言いながらも、彼は自分から僕を拒否することはしない。引き離そうともしない。本当に優しい。
彼と離れるなんて嫌で、暑くて何も考えられなくて、ただ僕はキスをしてほしくて、彼にキスを強請る。
困った顔で「ルカ、家に戻ってからにしよう?熱中症になっちゃうよ?」と言う。また僕の心配ばかり。
「今がいい」その一言だけやっとの想いで言うと、観念したように僕にキスをくれる。


彼とのキスはまだ慣れない。彼みたいに甘くて、優しくて、本当に融けてしまいそうだった。
彼の僕より一回り多きい肩に手を回すと、シャツが汗で濡れていて少しだけ汗の匂いがした。
その匂いが僕の熱をさらに高ぶらせた。
世界には僕たち2人だけしかいなかった。