新人声優の落書き

声優の玉子である私の落書き集。基本声優以外のことばかり書きます。

無題(仮):前編

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彼氏いんのかよ・・・
心の中でそう悪態をつく。

目の前の彼女は、実に軽やかに、事もなげに彼氏との週末デートルーティンをベラベラと話してくる。
もうやめたい。ちょっと好みの女性を見ると勝手に気分が浮足立って、彼氏がいると知った途端に勝手にガッカリすんの。
もうしばらくは恋愛しないって決めたのに、職場でちょっとタイプの子がいると無意識のうちにテンションが上がる。
そして無意識で彼氏がいないことを願ってしまう。そんな自分に辟易する。


やば。職場でこんな女漁り。ちょっとお腹減ってるからかなぁこんなイライラするの。
あー朝コーヒーだけだったしなぁ。
そう思い、デスクにいつも置いているプロテインバーを取り出す。
残業が当たり前の労働環境のせいか、休憩時間じゃなくとも勤務時間内にデスクで軽食をとることは黙認されている。
まぁその分いつ休憩とれるか分からないことが多いんだけど。


私がプロテインバーにかじりついてる間にも、彼氏と今度同棲しようか迷ってるとか、そんなことを延々と話し続けている。
恋愛対象外であることを突き付けられる辛さとは違う。そもそも私が彼女にとって恋愛対象外が恋愛対象内かジャッジするにも値しない、恋愛対象外であることが前提で話を進められる辛さ。どこに行っても体験してきた。最早この感慨に愛着すらある。
自分の目の前にいるのがまさか狼だなんて微塵も思ってない羊、みたいな。私を、彼女と同じ羊だと思って警戒を全くしないこの感じ。いい加減慣れてきた。


適当に相槌を打ちながら、彼女のことを観察する。
当たり障りのない栗色の艶のあるロングヘア。
ブラウンのタートルネックに華奢なシルバーネックレス、
ボトムスはグレンチェックのタイトスカートでまとまりが良い。
それでいてアクセントとしてシルバーのパンプスを履いている。
私は彼女のそこが良いなと思った。
私はいつも、ファッションセンスが変わってる人とばかり付き合う。
いやむしろファッションセンスが変わってる人とじゃないと付き合えない。
普通であろうとする努力の中の自己主張に弱いのだ。


ファッションだけでなく、顔も美人だ。
小さい頭に大きい目、化粧も薄くて清楚なお姉さんという印象だ。
これは大層男受けが良いことだろう。
私とは大違いだ。